マンハッタン島、
完全封鎖。
『ブラックパンサー』の
チャドウィック・ボーズマン
主演。
ハリウッドを代表する
新たな名匠、ルッソ兄弟が
練り上げた壮絶な
クライム・アクション!
殺人強盗犯を追跡するために、ニューヨーク・マンハッタン島にかかる21の橋を全て封鎖する。このシンプルにして大胆なアイデアを核に、夜のニューヨークを巻き込んだ犯罪追走劇。たった一夜の出来事がスリリングかつダイナミックに展開する!
主演はチャドウィック・ボーズマン。MCU(マーべル・シネマティック・ユニバース)の主演作『ブラックパンサー』で世界のニューヒーローとなり、2020年8月に43歳の若さで惜しくもこの世を去った彼は脚本に惚れ込み、主演のみならずプロデュースという形で本作に参加。逝去後もNetflix映画『マ・レイニーのブラックボトム』が絶賛を浴びるなど、このレジェンド俳優を求める声は止みそうもない。
監督は「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズを手掛けたブライアン・カーク。そして製作を『アベンジャーズ/エンドゲーム』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』の監督、ルッソ兄弟(ジョー・ルッソ&アンソニー・ルッソ)が手掛ける。Netflix独占配信の『タイラー・レイク―命の奪還―』など、プロデューサー業にも抜群の冴えを見せるハリウッドの新たな最強兄弟の手腕が光る。
撮影はニューヨーク市の協力の下、実際に夜間のマンハッタンで撮影された。警察官の父を殺害されながら自身も警官となり、苦悩しながらも事件を捜査するボーズマン演じる刑事の奮闘が共感を呼ぶ。
共演には『アメリカン・スナイパー』のシエナ・ミラー。これまでのイメージを一新し、ボーズマンの相棒となる麻薬捜査官であり、シングルマザーでもあるタフな女性を演じる。二転三転するストーリーと共に、男女のバディムービーという新機軸にも注目だ。さらに『バトルシップ』のテイラー・キッチュや、『セッション』でアカデミー賞®助演男優賞に輝いたJ・K・シモンズなど、豪華実力派が脇を固める。
撮影は『60セカンズ』『ソードフィッシュ』などの名手ポール・キャメロン。超一流のキャスト・スタッフが集結し、『フレンチ・コネクション』や『プリンス・オブ・シティ』など、ニューヨークを舞台にした都市型アクションの名作の系譜を継承する正統的な傑作に仕上がった。レガシーと現代性を両立させたリアルアクション。これぞ映画ファンを魅了する本物のエンタテインメントだ。
マンハッタン島に架かる
21の橋をすべて封鎖しろ!
島を警官で埋め尽くせ!
ニューヨーク市警(NYPD)の殺人課に所属するアンドレ・デイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)は、同じ警官だった亡き父親への想いを胸に、忙しい日々を過ごしていた。
そんな折、真夜中に事件が発生。大量のコカインを奪って逃げた犯人2人組が、現場を去る前に警察官を殺害したのだ。NYPD85分署のマッケナ署長(J・K・シモンズ)の指令により、アンドレは麻薬取締班のフランキー刑事(シエナ・ミラー)と組んで捜査を開始。そしてマンハッタン島に掛かる21の橋すべてを封鎖し、追い詰める作戦に出た。ただし時間は午前5時まで。夜明けまでには犯人の居場所を突き止め、逮捕しなければならない。だがアンドレは追跡を進めるうち、表向きの事件とはまったく別の陰謀があることを悟る。果たしてその真実とは!?
最後まで戦う。
仕組まれた捜査が
狂う時、恐るべき
真実が暴かれる。
ある殉職した警官の葬儀。悲しみに満ちた教会で、その息子である13歳の少年は涙を流しながら、神父の言葉を胸に刻み込んでいた。
「良心に従うこと。善悪の判断を他人に左右されないこと。この残酷な世界で、正しい道を歩むことを」。
19年後。かつての少年、アンドレ・デイビス刑事(チャドウィック・ボーズマン)は、ニューヨーク市警(NYPD)の殺人課で忙しい日々を過ごしていた。彼は優秀な刑事だったが、同時に問題視される存在でもあった。容赦ない捜査で知られる彼は、過去に警察官を殺した犯人を射殺したことで、同僚たちからも距離を置かれていたのだ。内務調査では、職務で発砲に及んだ正当性を追及されるが、アンドレは「正義の代価だ」と主張する。
アンドレの自宅には、尊敬する亡き父親の遺影が大切に飾ってある。年老いた母親は、最愛の夫を突然奪われた痛手をずっと引きずっている。アンドレは素晴らしい刑事だった父親に追いつこうと必死だった。
そんな折、午前0時13分 真夜中のニューヨークで事件が発生する。退役軍人のマイケル(ステファン・ジェームス)とレイ(テイラー・キッチュ)は、ブルックリンの店のワイナリーに隠されているコカインを盗み出す仕事を請負っていた。しかしその場にあったのは、彼らが想定していた量の10倍にもなる300キログラムの大量のコカインだった。
「何かおかしい、ヤバすぎる……」と、頭の切れるマイケルは不審に思ったが、その矢先、突然警官隊が突入。激しい銃撃戦となり、慌てたレイは警察官たちを射殺してしまう。マイケルは軽率なレイを怒鳴りつけるが、もはや彼ら強盗2人組は約50キログラムのコカインだけ手にして、その場から逃走するしか道はなかった。
結局、7人の警察官が殺害され、さらに1人が瀕死の重傷。凄惨な事件現場にやってきたアンドレは、犠牲になった仲間たちを見つめる。遺体の中には警察学校の同窓生もいた。
NYPD85分署のマッケナ署長(J・K・シモンズ)は、アンドレに本件の捜査に当たるように命じる。そして優秀でタフな女性、麻薬取締班のフランキー・バーンズ刑事(シエナ・ミラー)とチームを組むことになった。
フランキーと捜査を開始したアンドレは、大胆な作戦に出た。事件に介入してきたFBIや市当局の許可を取り付け、マンハッタン島に掛かる21の橋すべてをはじめ、川やトンネル、列車など、島全域を封鎖することを発令したのだ。
ただし時間は午前5時まで。夜明けまでにはマイケルとレイの居場所を突き止め、逮捕しなければならない。
一方、マイケルとレイは連絡係のトリアノ・ブッシュ(ルイス・キャンセルミ)を脅し、裏仕事の依頼主の紹介で、麻薬の換金を請け負うスーダン人のアディ(アレクサンダー・シディグ)のもとに向かった。そしてアディから現金と偽の身分証明書を得て、マイアミに高飛びしようと試みる。
しかし、まもなくアディのアジトにもなぜかNYPDの警官隊が駆けつけ、ドア越しの銃撃戦となる。いきなり目を撃たれたアディは死に際に、謎のUSBとパスワードをマイケルとレイに託した。「奴らのUSBだ、“クールハンド”」と言い残して。
アンドレは、マイケルとレイの逃走を手助けした連絡係ブッシュの居場所を突き止め現場のクラブへ急行するが、既に市警の警察官が早まって彼を射殺していた。その最中、無線連絡でマイケルとレイの居場所がわかったとの知らせが入る。
アンドレとフランキーは、逃げるマイケルとレイを追い詰めていく。ある食肉工場の中で、アンドレはレイを射殺。一方、マイケルはフランキーを人質に取り、アンドレと対峙する。
アンドレは、マイケルの聡明さを見抜いていた。「何もかもが怪しいんだ」彼から襲撃時の話とUSBの話を聞き、どうやら表向きの事件とはまったく別の陰謀があることを悟る。
この事件にまつわる、NYPD85分署の動きのすべてに疑問を持ち始めたアンドレ。なぜそもそも警察官たちが、大量のコカインを保管しているワイナリーに現われたのか?またなぜ、逃走犯であるマイケルとレイと同じく、警察官たちが麻薬の換金を行うアディのアジトにも向かっていたのか?封鎖解除まであと数時間。果たしてアンドレは驚愕の真実にたどり着くことができるのか!?
アンドレ・デイビス
ニューヨーク市警刑事。
過去に警察官だった父親が捜査中に殺害された。
犯人逮捕のためには手段は問わず自身の信念に従い犯人逮捕に全力を尽くすが
CHADWICK BOSEMAN
チャドウィック・ボーズマン
1976年、サウスカロライナ生まれ、ハワード大学卒業。オックスフォードのブリティッシュ・アメリカン・ドラマ・アカデミーで演技を学んだ後、俳優、監督、脚本家としてのキャリアをスタートさせた。ゲイリー・フレダー監督のドラマ『エクスプレス 負けざる男たち』(08)で長編映画デビューを飾り、偉大なアメリカン・フットボール選手フロイド・リトルを演じた。2013年、ワーナー・ブラザース作品『42~世界を変えた男~』で伝説の野球選手ジャッキー・ロビンソンを演じ、その演技を絶賛され、ブレイクし2014年、『ジェームス・ブラウン~最高の魂(ソウル)を持つ男~』でジェームス・ブラウンを演じ、再び高い評価を受けた。その後『ブラックパンサー』(18)で主演を演じ世界的なニューヒーローとなったが2020年8月に43歳の若さで惜しくもこの世を去った。本作では、プロデューサーとして作品開発に関わり意欲を燃やしたものとなった。
フランキー・バーンズ
アンドレと組むことになった
シングルマザーの麻薬担当捜査官。
犯人追跡に果敢に挑むが危機に陥る。
SIENNA MILLER
シエナ・ミラー
1981年、ニューヨーク生まれ。ニューヨークのリー・ストラスバーグ・インスティチュートで演技を学んだ。マシュー・ヴォーン監督の『レイヤー・ケーキ』(04)で映画デビューを飾る。それ以来、『カサノバ』(05)、『ファクトリー・ガール』(06)、『ザ・エッジ・オブ・ウォー 戦火の愛』(08)『G.I.ジョー』(09)など、立て続けに出演している。2014年には、米アカデミー賞5部門にノミネートされたベネット・ミラー監督の『フォックスキャッチャー』、クリント・イーストウッド監督の『アメリカン・スナイパー』に出演。
マイケル
親友のレイモンドと、小金欲しさに盗みに入るが想定外の事態発生に追い詰められていく。
兄は軍人でレイモンドと同じ部隊にいた。
STEPHAN JAMES
ステファン・ジェームズ
1993年、カナダ生まれ。スティーヴン・ホプキンス監督の『栄光のランナー/1936ベルリン』(16)ではオリンピックの英雄ジェシー・オーエンスを演じ、全米黒人地位向上協会(NAACP)イメージ賞にノミネートされ、カナダ・スクリーン・アワードを受賞した。エヴァ・デュヴァネイ監督の高評価を得た『グローリー/明日への行進』(14)では、小作人の息子で、学生非暴力調整委員会の学生活動家ジョン・ルイスを演じた。ほかにも、2015年のトロント国際映画祭でTIFFライジング・スター賞を受賞し、前述『グローリー/明日への行進』のキャストとともにブラック映画批評家協会賞最優秀アンサンブル演技賞を分かち合った。
レイモンド
腕の立つ元軍人。
駆けつけた警察官と遭遇、格闘の末、
8人を殺傷し逃亡。
TAYLOR KITSCH
テイラー・キッチュ
1981年カナダ生まれ。TVドラマシリーズ『フライデー・ナイト・ライツ』(06~11)で注目を浴びる。その後『バトルシップ』(12)と『ジョン・カーター』(12)に主演しキャリアを確実にしながらネイビーシールズの実話を元にした『ローンサバイバー』(13)で役作りに徹底した軍隊トレーニングを受け肉体を作り上げた。
マッケナ警部
アンドレに指示を出す頼りになる
ニューヨーク市警85分署署長。
警察官たちから絶大な信頼を得ている。
J.K. SIMMONS
J・K・シモンズ
1955年、デトロイト生まれ。映画、TV、舞台を通して幅広い役柄を演じ、すばらしいキャリアを築いてきた。『セッション』(14)でジャズの鬼教師フレッチャー役を演じ、2015年の米アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。この演技で、米映画俳優組合(SAG)賞/ゴールデングローブ賞/インディペンデント・スピリット賞/英アカデミー(BAFTA)賞、そして世界中の数多くの批評家協会賞を受賞した。近作には、『ザ・コンサルタント』(16)13年のボストンマラソン爆弾テロ事件をピーター・バーグ監督が映画化した『パトリオット・デイ』(16)、『ズートピア』(16)でライオンハート市長の声も担当している。
Produced by
JOE RUSSO
AND
ANTHONY RUSSO
製作:ジョー・ルッソ&
アンソニー・ルッソ
世界で最も成功を収めた映画・TV番組を手掛けた今、最も勢いのあるクリエイターの一人にあげられる。記録破りのヒット作と『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)、TVでは、エミー賞コメディシリーズ部門最優秀監督賞を受ける「ブル~ス一家は大暴走!」(03~18)、「コミ・カレ!!」(09~15)、「HappyEndings」(11~13)などのシリーズのパイロットエピソードや、多くの人気エピソードで監督を務め、高い評価を受けるTV番組を生み出してきた。また2018年初めにはグローバル市場をターゲットにしたアーティスト主導の新しい製作会社AGBO立ち上げた。
Directed by
BRIAN KIRK
監督:ブライアン・カーク
ロンドンに拠点を置くアイルランド系の映画・TV監督。BBC放送シリーズ「刑事ジョン・ルーサー」(10,11,13,15,19)の全シーズンの共同クリエイターと監督を務めた。また、「ゲーム・オブ・スローンズ」シリーズ(11~19)、「ボードウォーク・エンパイア 欲望の街」シリーズ(10~14)の主なエピソード、「ペニー・ドレッドフル~ナイトメア 血塗られた秘密~」(14~16)の重要なエピソードも監督している。近作は、HuluとBBC放送のためにニール・クロスと企画した新シリーズで、最初の2エピソードの監督を務めた「ハード・サン滅亡の機密ファイル」(18)がある。
Director of Photography
PAUL CAMERON
撮影:ポール・キャメロン
近年、『トレイン・ミッション』(18)や、J・J・エイブラムスが製作したHBO放送シリーズ「ウエストワールド」(16,18,20)のパイロットエピソードの撮影を担当した。映画を観ているような感覚をたかめるため、35ミリフィルムでこのパイロットエピソードを撮影し、2017年のエミー賞シングルカメラシリーズ部門最優秀撮影賞にノミネートされた。これまでに、そのほかに『ソードフィッシュ』(01)『60セカンズ』(00)『コラテラル』(04)『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(17)などがある。『コラテラル』は、まだ早い時期のデジタル媒体の能力を証明し、デジタル撮影を初めて大手スタジオ映画に導入して不朽の名声を与える作品となった。
一方でリアリティを
もとめ、
一方で
派手なアクションを
もとめるアメリカの
娯楽映画は、
刑事
ものというジャンル
を確立させた。
森直人(映画ライター)
これは1980年刊行の名著、筈見有弘編『70年代アメリカン・シネマ103』(フィルムアート社)における『ブリット』(68/監督:ピーター・イェーツ)の解説の書き出しである。本書ではアカデミー賞を獲得した『夜の大捜査線』(67/監督:ノーマン・ジュイソン)の成功を皮切りに、同種の傾向が『フレンチ・コネクション』(71/監督:ウィリアム・フリードキン)や『ダーティハリー』(71/監督:ドン・シーゲル)などに発展していったとの歴史観を記述している。
『21ブリッジ』の作風の源流は、まさしくこういった現代アクションの偉大なクラシックスだろう。『ブリット』と『ダーティハリー』の舞台は共にサンフランシスコ。そして『フレンチ・コネクション』で、ジーン・ハックマン演じるポパイ刑事が大暴れしたニューヨーク。同じくこの街を駆け巡る『21ブリッジ』は、ロケーションを主体とする「都市型アクション」の系譜の忠実な後継とも言える。
本作の監督、ブライアン・カーク(1968年生まれ)はTVシリーズで充分なキャリアを積んだ職人。彼が強い影響を受けたと公言している大先輩がマイケル・マン監督だ。例えばロサンゼルスを舞台にしたマンの人気作『ヒート』(95)や『コラテラル』(04)を、『21ブリッジ』の先行の達成に置くことに誰も異論はないだろう。特に後者は「一夜の物語」という構造も共通している。
製作のルッソ兄弟は、いかにも21世紀型ハイパーアクションの担い手といったイメージもあるが、例えばMCUの『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)にも「都市型アクション」のDNAがしっかり流れ込んでいることを確認できるはず。Netflixで製作した傭兵活劇『タイラー・レイク―命の奪還―』(20/監督:サム・ハーグレイブ)が懐かしの「洋画劇場」感に満ちていたのと同様に、『21ブリッジ』はVFXなどの添加物に慣らされて我々が忘れかけていた映画の味覚を蘇らせてくれるのだ。
マンハッタン島を
一晩封鎖する卓越した
アイデア
チャドウィック・
ボーズマンが惚れ込んだ
企画
「犯人追跡のためにマンハッタンを封鎖するというアイデアにまず惹かれたんだ」と、主人公アンドレを演じ、本作のプロデュースも担当する『ブラックパンサー』(18)のスター、チャドウィック・ボーズマンは言う。「観たことのない映画になると思ったし実際素晴らしい出来栄えになっているよ」
製作パートナーのローガン・コールズはこう述べる。「初めて脚本を読んだ時に予告編が想像できた。アクション映画にとって最高のコンセプトだと思ったんだ。犯人を捕まえるために島を封鎖する警官。手に汗握る物語だ」
製作陣はアクション以上に、警官と彼らが追跡する者との複雑な関係を掘り下げたいと熱望した。ブライアン・カーク監督は言う。「犯人追跡劇、そして彼らの道徳観を描く映画にずっと魅力を感じていた。これはエネルギッシュで壮大な追跡劇が展開するサスペンススリラーなんだ。一晩、マンハッタン島を封鎖するという、素晴らしいコンセプト。理屈抜きに面白いリアリズム。スケールの大きさとド迫力のスペクタクル。まるで軍事侵略のようだ。古典的な神話や、ニューヨークの犯罪映画の伝統に見られる明快さがある。『21ブリッジ』は、そういった伝統の中に存在する現代的な物語を描いているんだ」
複雑で現代的な主人公、
アンドレ・デイビス刑事
本作で主演のボーズマンや監督のカークとチームを組むのは、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を成功に導いてきたジョー・ルッソとアンソニー・ルッソ兄弟である。二人はこれまでに、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』(14)、『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(16)、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18)、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)といった大ヒット映画の監督を務めてきた。
ジョー・ルッソは、自分と兄アンソニーのクリエイティブな領域に『21ブリッジ』がぴったり合っていたと語る。「私たちはジャンル映画で育ってきた。特に洗練された題材を扱ったレベルの高いジャンル映画だ。ブライアン・カークは、私たちが仕事をしてみたいアーティストのトップにいた。彼はこの映画のテーマや展開とひねり、そして取り組むべき社会的な問題を理解している」
本作には豊かで深みのある社会的主張が存在する。警官と犯人の間に横たわるきわどい境界線にフォーカスを当て、それらすべてが微妙な陰影のキャラクターたちによって生き生きと描かれるのだ。
アンドレは複雑なキャラクターだとチャドウィック・ボーズマンは説明する。「彼は全人生をかけて警官になるために準備してきた。アンドレの父親は警官だったが、自分が13歳の時、職務中に殺された。だから彼は父親の未解決の殺人事件と共に成長してきたんだ。アンドレはずっと、父親の死への報復だけでなく、殉死した警官たちのための報復を決意していたんだ」
逃亡者たちの運命と絆
親友であり、コソ泥でもある二人が起こした強盗事件。大掛かりな犯人捜査を引き起こしてしまうマイケルとレイを、ステファン・ジェームズとテイラー・キッチュがそれぞれ演じる。大量のコカインの隠し場所を見つけた二人は、逃亡中に7人の警官(そしてのちに死が伝えられる警官を含めて計8人)を殺してしまう。
レイはブロンクスの治安が悪い地域の出身で、戦っては生き延びてきた経験豊富な軍人だった。レイは海外の戦闘で親友を亡くした。それがマイケルの兄である。
レイは凄腕だが、おそらく精神を病んでいるかもしれない。演じるテイラー・キッチュはこのキャラクターの心を見出した。「彼の演技にはめったに得ることのできない真実味がある。テイラーは、『ローン・サバイバー』(13)や『野蛮なやつら/SAVAGES』(12)でネイビーシールズと一緒に訓練した経験があるから、兵士の演じ方を知っているんだ」と製作のマイク・ラロッカは言う。
ジョー・ルッソは、有名なTVシリーズ「Friday Night Lights」(06~11)に出演していた頃から、兄弟揃ってテイラーのファンだと言う。「テイラーにはいつも素晴らしい存在感がある。この映画でも、彼は複雑な人物に見事に命を吹き込んでいる」
マイケルは兄の足跡を追って軍隊に参加し、軍務中に兄が殺されるところを目の当たりにした。マイケルを演じるステファン・ジェームズは「マイケルは金を稼ぐ必要に追い込まれていた。軍隊訓練を生かし、彼は新しい仕事を見つける。それが麻薬を盗むことだった。マイケルはレイのことを兄の身代わりのように思っている。二人はほとんど生まれてからずっと知り合いで、互いに心地よさと信頼を感じてきた」と言う。
犯人追跡劇のクライマックスにおけるアンドレとマイケルの対決では、彼ら二人は似たような服装をしている。まるで鏡に映る分身のように。両者とも知的で有能だが、経歴は異なる。一人は警官の家で育ち、もう一人は犯罪界で成長した。
アンソニー・ルッソが付け加える。「ステファンの演技はマイケルに大きな感情と深さをもたらしている。この映画で、彼はスーパースターダムへと大躍進することだろう」
意外なパートナー
アンドレは新しいパートナーと組まされた時、見合い結婚でもしたかのように感じた。相手はシエナ・ミラー演じる麻薬取締局の捜査官フランキー・バーンズである。「アンドレは殺人課の刑事で、フランキーは麻薬課の刑事なの。だから本来、一緒に仕事をするのは難しい」とシエナは言う。「でも麻薬と殺人がらみの犯罪だから組まざるをえない。だけど二人は仕事ができる人間だから、自然に信頼し合うようになるの」
シエナ・ミラーは、彼女が演じるフランキーという異色のキャラクターについて「シングルマザーの警官。麻薬課の刑事だから勤務時間が安定しない。仕事に追われてあまり多くの選択肢がないの。だから彼女の道徳観はそれを反映している。才能豊かで献身的なアーティストたちと、全く新しいものに挑戦できることが魅力的だったわ」と語る。またオファーを受けた時はチャドウィック・ボーズマンと仕事が出来るのは格別に嬉しいことだったが、それまで撮影続きだったこともあり「正当な報酬を得られれば受ける」と断られることを前提で出演料を打診したところ、チャドウィックが自身のギャラをシエナに提供し、出演が決まったことを明かした。
カーク監督は『フォックスキャッチー』『アメリカン・スナイパー』(共に14)や『シングルマザー ブリジットを探して』(18・未)といった作品でシエナの演技の大ファンだった。「母親としても、タフな麻薬課の刑事としても真実味がある。そんな女優を見つけるのは簡単じゃなかった」と監督は付け加える。「シエナを得られて本当にラッキーだったよ。しかも彼女は運動神経が抜群で、アクション映画のどんなキャラクターでもやってのけるんだ」
NYPDと、
厚みのある脇役たち
ニューヨーク市警85分署を取り仕切る警察署長マッケナは家長のような存在で、警官であることを愛し、献身的にチームの世話をしている。マッケナには温かさと残忍性が混ざり合い、抗しがたい魅力を放っている。演じるのは『セッション』(14)のサディスティックな音楽教師の演技で米アカデミー賞®受賞歴をもつJ・K・シモンズ。カーク監督は「最高の俳優」と称賛する彼をキャスティングすることによって、このキャラクターをさらに高めたいと考えた。
シモンズは本作に引き付けられた理由をこう語る。「マッケナの温かさの裏には、もっと複雑なものがある。私は常に白か黒で分けられない物語に引き付けられる。この映画のキャラクターは全員複雑だ。聖人も悪魔もいない。全員のダークサイドを掘り下げているんだ。たとえ英雄のような人物であってもね」
そのほか脇を固める俳優陣には、副市長モット役のモロッコ・オマリがいる。モットは別の意味でアンドレとの歴史があり、何度もアンドレとぶつかってきた。だが、島を封鎖するというアンドレの大胆な計画は認めている。さらに謎めいた裏社会の大物、スーダン人のアディ役をアレクサンダー・シディグが演じている。マイケルとレイは大量の麻薬を換金し、マネーロンダリングしてもらうためにアディのもとに向かう。アディはウォール街のブローカーだが、夜は麻薬カルテルのためにマネーロンダリングをしていた。また、マイケルとレイを騙して強盗させ、動きを追う麻薬ディーラー、トリアノ・ブッシュ役をルイス・キャンセルミが演じている。
ニューヨークの
リアリティ
『21ブリッジ』は世界で最も忙しく、最も人口の多いマンハッタン島での一夜の出来事を描いている。本作は徹底したニューヨークの映画だと、主演のチャドウィックは主張する。「会話からリズムやペースに至るまで、まさにニューヨークだ。この映画はニューヨークを体感する映画なんだ」
製作陣も同様に、警察の戦術、武器、対人関係を真実味のある描写にしたいと考えていた。そのために、ニューヨーク市警(NYPD)の退職警官ジム・ボドナーとデヴィッド・アダムスを技術顧問として招いた。殺人事件の捜査と緊急サービスで30年以上の経験をもつ二人が、毎日セットを訪れ、NYPDの警官や職務について助言し、顧問を務めた。リアルな会話から、引き金のどこに指を置くのか、犯罪現場ではどんなふうにドアを通るのか。この映画では徹底して高い信ぴょう性にこだわった。それが真にエキサイティングな臨場感を作り出すことになった。
チャドウィックがNYPDの夜間勤務の警官に同行した時に分かったこともある。彼とシエナ、犯人役のテイラーとステファンは、警官の目を通した殺人事件の捜査を体験した。
美術のグレッグ・ベリーは、本作の生々しく信ぴょう性のある外観をデザインした。「夜が基本だった」とベリーは言う。撮影監督のポール・キャメロンと緊密に作業しながら、ベリーは「ニューヨーク市のいかがわしい地域やブルックリンの奥まった雰囲気、さらに、マイケルとレイが生き残るために通り過ぎていくさまざまな場所の様相を作っていった」と言う。
大掛かりな撮影セットのひとつに、モストーズという架空のレストランがある。マイケルとレイがコカインを盗むためにやって来て、警官との銃撃戦になり、何人かの警官が死んだ場所である。そのシーンは有名シェフのホセ・ガルセスのレストラン、ティントで撮影された。何百もの薬莢、横たわるいくつもの死体、そして犯罪現場の捜査官やパトカーが、息もつかせぬ冒頭の強烈なシーンを印象付けている。
美術のベリーはフィラデルフィアのど真ん中に、ブルックリンの交差点を作った。それは地元民が振り返って二度見するほど詳細にできていた。ニューヨークの消火栓、屋外用のゴミ箱がそこに置かれ、壁には落書きが施された。
そのほかの目立つセットデザインには、ニューヨーク市のチャイナタウンの路地がある。ネオンも大型のごみ箱も有刺鉄線も、落書きも本物そっくりに作られた。また、フィラデルフィアのフィッシュタウンにあるキッシン・ミートに肉屋が作られた。
ニューヨークへのロケ地には、グランド・セントラル駅、チャイナタウン、ブルックリン海軍工廠、ミートパッキング・ディストリクト、ファースト/サード・アベニュー、ブルックリン/マンハッタン・ブリッジ、クイーンズのシルバー・カップ・スタジオなどがある。
マネーロンダリングのアディの贅沢なアパートのセットでは、ドアの両サイドから凄まじい銃撃戦が繰り広げられる。特殊効果チームは何百という弾丸が各ドアやコンピュータスクリーンに撃ち込まれるシーンを撮影した。3日間で300個の爆竹に点火し、視界にあるあらゆるものを破壊した。
これらの壮絶なアクションは、本作の壮大なスペクタクルとスリルを演出するために必要不可欠なものだが、製作陣は、観客には同様に、豊かで細かいところまで描かれたキャラクターたちや彼らの予想外の協力、裏切り、力関係にも魅力を感じてほしいと強調する。
「私たちは物語を語り、人々を驚かしたいし、充実した多次元体験をしてもらいたいと思っている」とジョー・ルッソは言う。
「『21ブリッジ』には強烈なアクションがふんだんに盛り込まれている。それを観客に届けることは大きな喜びだ」とブライアン・カーク監督はまとめる。「その中で観客はきっと、追う者アンドレと追われる獲物マイケルの発展していく関係に心を動かされることだろう。これは現代のノワール映画だ。全く共通点がなさそうに見えた二人が、実際にはあらゆる意味で共通していた。その皮肉な人間関係について描いた追跡劇なんだ」